プチ断食ダイエットを格付け!効果やメリット・デメリットは?

プチ断食ダイエットの方法は以下の通りです。

①基本的に1日だけ食事をまったくやめる

②水分は充分にとる

③前日や翌日も食事を軽くするなど、ウォーミングアップとクールダウンにあてる

 

プチ断食ダイエットの背景

 

自分の体重が、朝と夜でどれくらい違っているかご存じですか?

ご存じない方は、ぜひ一度、量ってみてください。まず朝起きてトイレに行ったあと、朝食の直前に測定します。体重計の性能にもよりますが、できれば0.2キログラム刻みくらいの正確さで量ってください。夜は、夕食のあと、もうこれ以上は飲み食いしないという時刻に測定します。

その差は年齢や性別、体の大きさ、生活習慣、体調などによっても異なりますが、夜のほうがあきらかに重くなっているはずです。中肉中背の私の場合、1.2キログラムほど。女性ではやや小幅となりますが、それでも男女を問わず「一日にこんなに食べていたのか」と驚くかもしれません。

この差が、一日に口にしたすべての飲食物の重さから、日中に体外へ放出したエネルギー、汗や便、尿などの重さを引き算したものです。もし一日中、まったく何も口にしなかったとしたら、体重はその分だけ減っていくことになります。つまり断食をすれば、これだけのペースで体重を落としていくことができるわけですが、ただし体重が軽くなるにつれ基礎代謝量も低下していくため、減量のペースは徐々にダウンします。

「断食」と「絶食」は、どちらも一定の期間、いっさい食事をしないという意味の言葉で、断食は修行や宗教行事として行なわれるもの、断食は医療として行なうものという使い分けが一般的になされているようです。最近は、おしゃれに「ファスティング」という言葉も使われています。ファストは断食のことです(中学生だったころ、英語の授業で「ブレックファストはもともと断食を破るという意味で、いまは朝食を表す言葉として使われるようになった」と習ったのを思い出します)。

プチ断食は、その名のとおり、ちょこっと断食をしてみるという意味です。最近はテレビのバラエティ番組などでタレントが「やってる」と発言したり、ホテルが「週末断食プラン」宿泊パックを売り出したりと、流行に拍車がかかっています。この流行は海外でも同じで、いまをときめくハリウッド男優のベネディクト・カンバーバッチがやっていると発言し話題になっています。ただし海外でプチ断食という言葉はあまり使われておらず、

「断続的ダイエット」

「5-2ダイエット」

などといわれています。5-2とは、週のうち5日間は好きなだけ食べ、2日間を断食にあてるという意味です。

 

 

一般書の例

『週2日ゆる断食ダイエット』(マイケル・モズリー/ミミ・スペンサー著、荻野哲矢訳、幻冬舎)

『奇跡が起こる半日断食――朝食抜きで、高血圧、糖尿病、肝炎、腎炎、アトピー、リウマチがぞくぞく治っている!』(甲田光雄著、ビタミン文庫)

『究極のデトックス ファスティングダイエット――スポーツトレーナーが伝授する、2週間でカラダが生まれ変わる「断食術」』(藤原茜著、インプレス)

 

プチ断食ダイエットの良い点

プチ断食については、さまざまな学術調査が行なわれていて、普通のカロリー制限に比べると、減量効果があきらかに高いとする調査結果が得られています。

その理由は、体内に蓄積されたグリコーゲンにあるようです。つまりグリコーゲンは、いざというときのエネルギー源で、普段は筋肉や肝臓に蓄えられていて、規則正しく食事をしているかぎり、あまり消費されることはありません。しかし断食を始めてから12時間ほどすると、グリコーゲンが使われるようになり、その不足分を補うため脂肪が動員され、結果的に体脂肪が少し減少する、ということです。なお「普通のカロリー制限」については最終章で解説します。

プチ断食には、有害な活性酸素の発生を抑える効果もあり、喘息の症状が軽くなったとする研究データも発表されています。さらにプチ断食が脳を活性化させ、認知症などの病気を予防するような変化を認めたとする動物実験のデータもありますが、ヒトではまだ確認されておらず過信は禁物です。

 

プチ断食ダイエットの疑問点

「デトックス」という言葉が、断食の話によく出てきます。いったい何のことでしょうか。

これは英語で解毒を表す単語を縮めた言葉で、何らかの方法で体内に溜まった「毒素」を体外に排泄することです。最近はダイエット、とくに断食の宣伝文句としてよく使われ、ときどき食事をとめることで胃や腸に溜まった毒素もすっきり排泄される、という主張なのです。

しかし人間の体は、絶え間なく動き続けることができるようになっていて、毒素が溜まるということはありません。睡眠以外の休息は必要ありませんし、24時間の生体リズムはきわめて大切なもので、そのリズムを乱すと、むしろ病気にかかりやすくなることが多くの研究からあきらかにされています。

わかりやすいのは心臓で、生まれ落ちてから死ぬまで生涯にわたり休むことがありません。ちょっとでも休まれては大変ですから、説明の要もないでしょう。お酒好きの人が免罪符としているのが休肝日、つまり1週間に1回、お酒を飲まない日を設けることですが、その根拠も存在しません。肝臓は、たえず血液中の不要な物質を無害なものに変えるという解毒作用を担っていて、この働きも休息を必要としていないのです。

胃腸も同様で、一日3食のリズムを保つことが大切です。風邪を引いたりして胃腸の調子が悪いときも、いつもと同じリズムで消化の良い食事を少しでもすると、むしろ回復が早まります。サプリメントやドリンク剤のコマーシャルでよく見かけるのは、「腸の壁にこびりついた便をお掃除」とか、「宿便をやっつけろ!」などのフレーズです。しかし腸は台所の排水管とは異なり生きている管ですから、便がこびりついたりすることは決してありません。

デトックスの考え方は数千年前からあったもので、たとえば祈祷師のお祓いなども、その一種でした。「体に溜まった毒を追い払うことができる」と言われれば、だれもがすがりたくなります。しかし(病院で行なわれている治療は別にして)いわゆる民間療法は科学的に証明されておらず、中には悪徳ビジネスによる有害なものもあるので、ご用心です。

それにしても、断食はどれくらいの日数まで続けて大丈夫なのでしょうか。

ニュースでも話題になった、比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)で行なわれる断食修行では、9日間にわたって、いっさいの食べ物、飲み物をとらず、眠ることも横になることも許されないのだそうです。これほどまでに過酷な断食は、まさに命がけです。

ヒトは何日くらい食事をしなくても大丈夫なのかは、実験した人がだれもいないため不明です。そのような実験は人道に反しますから、当然、ありえないわけです。不幸にして事件や事故に巻き込まれた人が、何日間か飲まず食わずの時間をすごしたあと、無事に生還したというニュースはありますが、詳しい状況がわからず、個人差もあることから、一般論としてまとめることはできそうにありません。

宗教行事として行なわれる断食で有名なのがラマダンです。およそ1カ月の間、日の出から日没までいっさいの食べ物と水分を口にしないというものです。日没後は自由に飲食をしてもよいとされています。

この行事には医学的に大きな関心が集まっていて、健康との関係がいろいろ調べられています。たとえば心筋梗塞と脳卒中は現代人の寿命を考えるうえで重要な病気ですが、ラマダンのあとも、発生率が高くなったりすることはなかったと報告されています。しかし断食の習慣を持たない人たちと比べてみなければ、本当のところはわからないはずで、このようなデータの信憑性は低いでしょう。

第二次世界大戦が終わりに近づいたころ、米国で驚きの実験が行なわれました。飢餓が続くとヒトの体はどうなるのか、また栄養を回復させるにはどのような食事をさせればいいのかを調べるための医学実験でした。非人道的だと非難を受ける一方で、医学的に貴重なデータが得られたとされています。

対象となったのは、ボランティアの男性36人でした。実験は、摂取カロリーを普段の半分近くに減らした食事を、168日間にわたって続けたというもので、完全な断食ではありません。その間、毎日5km以上歩いたり走ったりすることも求められたそうです。実験終了時、彼らの多くは体重が25%以上も落ちて、あばら骨が突き出て、性欲は完全に失われ、貧血や関節の張れなどの重い症状に悩まされたようです。

実験に協力した人たちのうち半数は60年経ったあとも生存しており、インタビューに答えています。それによると、実験が終わり、食事制限が解除されたあと、精神的にうつ状態となり、体調がもとに戻って日常生活ができるようになるまで、数カ月から数年もの時間がかかったとのことです。

断食の怖さを証明した実験だったのです。

 

プチ断食ダイエットの格付け

1点/10点

 

▼理由

・個人差もあり一概にいえないが、健康に対する重大なリスクがありうる

・習慣にしてしまえば長く続けることができそう

・やせられるか、という意味では究極のダイエット法であり、効果は高いといえる

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