水飲みダイエットを格付け!効果やメリット・デメリットは?

水飲みダイエットの方法は以下の通りです。

①毎食の直前にコップ2杯の水を飲む

②または一日に体重の4%に相当する水を飲む(体重60キログラムで2.4リットル)

③毎日10回、コップ1杯ずつの水を飲むという方法もある

 

水飲みダイエットの背景

「何かを食べたり飲んだりしてやせる」というタイプのダイエットの中でも、究極は水を飲んでやせるという「水飲みダイエット」でしょう。その格付けを始める前に、水に対する理解を深めておきたいと思います。

「毎日、水を2リットル飲むと健康になる」という、都市伝説にも似た話が広まっています。私の診察室を訪れる患者さんの中にも、「毎日、水を2リットル飲んでますから……」と誇らしげに語る人が少なくありません。その話の出処を、まず探ってみることにしましょう。

1945年、米国の食品栄養委員会という学術団体が、「われわれの体は毎日2.5リットルの水を必要としている」というコメントを発表しています。一日の摂取カロリーに等しい水分をとる必要があるから、という説明もいっしょになされていました。

もし、そのとおりなら、たとえば2000キロカロリーの食事をしている人(平均的な日本人中年女性に相当)は、2リットルの水が必要だということになります。このコメントには、「食品に含まれる水分も含める」との但し書きもついていましたが、その大切な部分を多くのメディアが読み飛ばしてしまい、いつのことからか「毎日、たっぷりの水を飲むべし」という話にすり替わったようです。

時代は進んで1974年、こんどは米国ハーバード大学の高名な栄養学者フレデリック・スターレ氏が自著の中で、「24時間ごとにグラス6~8杯の水を飲む必要がある。ただし、コーヒー、牛乳、ジュースなどでも構わない」と述べました。グラス1杯は、米国の場合、8オンス(約237ミリリットル)ですから、換算すれば毎日1400~1900ミリリットルの水分が必要だという話になります。

これらの話題に拍車をかけたのが、前米国大統領夫人のミシェル・オバマさんでした。2013年のホワイトハウス公式ホームページによれば、すべての人がもっと水を飲んでほしいと、同夫人が呼びかけていたのです。キャッチフレーズが「あとコップ1杯の水を飲みほそう」です。背景には、とくに米国で甘い炭酸飲料が大流行していて、健康への悪影響が懸念されることから、それよりも水を、ということのようです。

しかし、この発言に対しては、「多くの専門家から「科学的根拠がない」との批判が寄せられました)。

では、いったいヒトはどれくらいの水を飲めばいいのでしょうか。

医学専門書によれば、一日にヒトの体を出入りする水分量は、体重60キログラムの日本人の場合、以下のようだとされています。

〈体に入る水分量〉

 飲み物 1500ミリリットル

 食品中の水分 800ミリリットル

 栄養素が体内で燃焼して生ずる水分 300ミリリットル

〈体から出ていく水分量〉

 尿 1500ミリリットル

 皮膚や呼気から蒸散する水分 1000ミリリットル

 大便 100ミリリットル

一日に必要な水分の合計は2600ミリリットルとなりますが、水分摂取量としては1.5リットルでよいことになり、米国の高名な栄養学者の弁は、それほど間違っていなかったことになります。しかし、「一日2リットルの水を飲む」という健康法(?)を実践している人たちに話を聞くと、ミネラルウォーターや水道水を2リットル飲まなければならないと考えており、日々の食事としてとる味噌汁や牛乳、コーヒーなどは別勘定らしいのです。欧米人に比べて体の小さな日本人が、なぜこれほど大量の水を飲めという話になったのかは、結局、わからずじまいでした。

一方、毎年、夏が近づくたびに、「熱中症を予防するため、こまめな水分補給を!」の大連呼が聞こえてきます。熱中症は、体温が40℃を超える状態が続いたときに起こるものであり、体温を異常に上げないようにすることが唯一の予防症です。水分をいくら補給しても熱中症を予防できるわけではないにもかかわらず、なぜそのようなことになってしまったのか、これもまたよくわからない話なのです。

水に関連した話題がもうひとつあります。有名な「血液さらさら神話」です。

水飲みダイエットを推奨する人たちの言い分も、たんにやせられるだけでなく、ついでに血液もさらさらになるからというものです。何年か前のテレビに、こんなシーンが流行していました。怪しげな機械を使って血液がどろどろ流れている顕微鏡動画を見せたあと、1杯の水や健康茶を飲むと、たちどころにさらさらに流れていく映像にかわるというものです。じつは、この装置はねつ造されたもので、開発した(?)大学教員が解雇されたという後日談があるのをご存知でしょうか。

血液は、水分を除けば容積の大部分が赤血球と呼ばれる細胞です。その直径は7ミクロンほどですが、血液が流れている毛細血管の一番狭いところはその3分の1くらいしかありません。それでも血液がスムーズに流れることができるのは、赤血球が柔軟に変形する能力を備えているからです。

この柔軟性は、病気などで低下することはあっても、水やお茶を飲んだくらいで変化するものではありません。もし本当に血液がどろどろになったりすれば、全身の血管はたちどころに詰まってしまい大騒ぎです。しかし、そんなことが実際に起こったという話は聞いたことがありません。血液が短時間でどろどろになったり、さらさらになったりすることはありえないと考えてよいでしょう。

 

水飲みダイエットの良い点

つい最近、水を飲むとやせることを証明したとされる調査の結果が発表され、話題になっています。その調査は米国で行なわれたもので、2万人弱の成人にアンケートを行ない、1週ほど間隔をおいた2日について、口にしたあらゆる食品と水分を細かく質問したものです。分析の結果、2日間のうち、水(ミネラルウォーターや水道水)を多めに飲んだ日のほうが、一日の摂取カロリーが69~206キロカロリー少なくなっていることがわかりました。調査に協力した人たちには、水を飲むことも含め、調査の主催者からなんら依頼も強制もされておらず、普段の食生活を送ったあと、その詳細をあとで調べたというものです。

カロリーが少なかった理由として、調査を行なった研究者たちは2つ考えられると述べています。ひとつは、水を多く飲んだ日は甘い炭酸飲料を飲む量が少なかったかもしれないこと、もうひとつは水を多く飲んだ日はその分だけお腹がいっぱいになり、スナックや食事の量が少なめだったのではないかということです。

納得できるような、できないような話ですが、案の定、この研究に対しては、「ヒトは過去に食べたり飲んだりしたものをグラム単位で覚えているはずがなく、調査方法に疑問がある」「水を飲んだ量と、体重が減った割合との関係が具体的に示されていない」「類似の研究はいくつかあるものの減量効果は微々たるもので、たとえ1年間、水を多めに飲み続けたとしても体重はせいぜい1キログラムしか減らない」などの批判が殺到したとのことです。

この話の信憑性はどうであれ、以下に述べるとおり、水分をとりすぎるのはきわめて危険な行為であり、いかなる理由があってもお勧めすることはできません。

 

水飲みダイエットの疑問点

「水だけ飲んでいればやせられる」というのは真理です。カロリーのないものでお腹を満たし、その分、食事を減らせば、やせるに決まっているからです。しかしダイエット法として安全かどうかは、全く別の問題です。

飲みすぎた水分は、基本的に尿となって、ただちに体の外に排出されるものですが、短時間に大量の水を飲んで一時的に血液が薄まってしまい、体調をくずす人がたくさんいます。代表的な症状としては、体がだるい、足がつる(こむらがえり)などですが、症状が進むとけいれんを起こしたり、時には死にいたることさえあります。「夏バテした」と自己診断をして病院を訪れる患者さんの訴えを聞いていると、水分のとりすぎが原因ではないかと思われるケースが少なくありません。

 

水飲みダイエットの格付け

1点/10点

 

▼理由

・水分のとりすぎは健康に重大は害を及ぼすから

・毎日大量の水を飲むのは難航苦行であり、長続きさせるのは難しい

・水分をたくさんとって食事を減らすことができれば、やせられるのは当然だが……

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