オーバーナイトダイエットの方法
①週6日は、たんぱく質を中心にした食事をする
②週1日をスムージーなど飲み物だけにする
③夜は8時間以上、ぐっすり眠る
④運動はしない
オーバーナイトダイエットの背景
名門ボストン大学医学部の女性医師キャロライン・アポビアン氏が、2014年に書いた本『オーバーナイトダイエット』が米国で話題になり、その後、日本にも流行が上陸しました。直訳すれば「寝てる間のダイエット」です。
アポビアン医師によれば、最初の一晩で1キログラム、1週間後には4キログラムくらいやせられるそうです。大切なのはぐっすり眠ることで、睡眠不足になると腸から「飢餓ホルモン」なるものが分泌され、耐えがたい空腹感でダイエットに失敗してしまうのだとか。
この先生の主張は他にもいろいろあり、このダイエット法の実行中は運動をしなくていいとも述べています。また、これまでのダイエット法では減量に成功する人の割合がせいぜい25%程度だったところ、オーバーナイトダイエットに替えたら50%にもなったということです。
「寝ている間にやせられる」がうたい文句ですが、あまりにうますぎる話で「ほんと?」と思わず声がでてしまいそうです。テレビコマーシャルの「寝ている間に英会話がマスターできる」というフレーズをつい思い出してしまいます。
案の定、専門家からは、きつい反論が出されています。「一晩で体重が1キログラム近くも減少するのは、おもに水分が蒸発するからで、体脂肪が減っているわけではない。これだけの体脂肪を燃焼させるには、7000~8000キロカロリーの食事制限が必要だ。何もしないで一晩でそんなにやせるわけがない」と。
対する開発者のほうは、夜中に体重が減るのは水分の蒸発によるものであることを認めた一方、たんぱく質をたくさんとり続けることで体重は必ず減っていく、と反論を述べています。この医師は肥満治療で名の知られた人のようで、権威ある医学専門誌に、ダイエットに関する招待論文が掲載されています)。論文には、どのダイエット法が優れているかを論ずるには、もっと学術的な比較調査が必要だと記述されていて、「言ってることと、やってることが違う」という感じです。
どうやらこの方法のポイントは、週に1回プチ断食をすることと、脂肪・炭水化物をとらないということのようです。ぐっすり眠るというのは、もっともらしく見せるための商業戦略かもしれませんね。
オーバーナイトダイエットの良い点
このダイエット法の良い点について、いろいろ考えてみましたが、何も思い浮かびませんでした。プチ断食をやってみたいという人には、こんな方法もあるということで参考になるかもしれません。
オーバーナイトダイエットの疑問点
朝と夜の体重にはだれでも0.5~2キログラムほどの差があるものです。この事実を隠してオーバーナイトダイエットを宣伝しているのだとすれば、虚偽ということになります。もし本当に1週間で4キログラムもやせるのだとすると、あまりのオーバーペースで、体調を崩してしまう心配もあります。
もし、やせる理由がたんぱく質をたくさんとることにあるのだとすれば、低炭水化物ダイエットと同じであり、たんぱく質のとりすぎによる重大な健康リスクを抱えることになります。
毎日8時間ぐっすり眠りなさいとの主張にも疑問があります。眠りたくとも眠れない人もたくさんいますから、いささか酷な条件ではないでしょうか。不眠を訴えて病院へ行けば、必ずといってよいほど睡眠薬が処方されますが、薬に頼ってぐっすり眠っても健康増進にはつながりません。私の研究グループで行なった調査によれば、日本人の場合、一日の睡眠が6時間くらいの人がもっとも血管年齢が若く健康的です(文献3)。海外の調査でも同じような結果が得られていて、寝すぎは健康増進にとってむしろ逆効果なのです。
疑問だらけのこの方法が、日本でどのように伝えられているのか興味津々です。調べてみたところ、以下のような効果があると宣伝されているようです。
その1「寝ている間に脂肪を燃やせる」
⇒すでに述べたとおり、眠るだけで脂肪は燃焼しません。
その2「インスリンの分泌が抑えられ、脂肪が溜まりにくい」
⇒インスリンが抑えられると代謝が低下してしまい、脂肪はむしろたまりやすくなります。
その3「リバウンドしにくい」
⇒リバウンドを回避できる唯一の方法を最終章で紹介しますが、オーバーナイトダイエ
ットでは科学的なデータが公開されておらず判定不能です。
その4「お腹まわりや下半身もやせる」
⇒ダイエットや運動で、お腹まわりなど特定の部位だけがやせるということはありえません。お腹まわりだけやせたように見えても、じつは体重とともに全身がやせているはずなのです。
その5「ストレスがない」
⇒ダイエットはつねに非日常的な行為ですから、多少にかかわらずストレスはあるはずです。オーバーナイトダイエットの開発者が学術論文として発表したデータはなく、ストレスがないとの証明はなされていないはずです。
その6「高たんぱくの食事は体によい」
⇒高たんぱくの食事を続けることの危険性はすでに46ページで述べたとおりです。
その7「スムージーでいろいろなバリエーションを楽しめる」
⇒あえてスムージーにする理由がわかりません。美味しい果物・野菜はそのまま食べたほうがよいのでは?
オーバーナイトダイエットの格付け
1点/10点
▼理由
・プチ断食と同じで、体内リズムを乱してしまうなど、さまざまなリスクが懸念される
・断食、高たんぱく質、よく眠るなど条件が多く、長く続けるのは難しそう
・炭水化物をとらないのであれば、やせることはやせるが……
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